酸性塩

「酸性塩」と言われると「酸性の塩」の様な印象を受けますが、定義が違うので注意が必要です。

酸性塩の定義は「分子中に放出可能な水素を持っている塩」です。ですから「放出が可能」でさえあれば、実際に「放出しなくてもよい」のです。つまり「酸性でなくても良い」訳で、実際「塩基性の酸性塩」もあります。

???

ややこしいですね。具体的に説明したほうが分かりやすいと思うの で、具体的にいきましょう。

例えば、硫酸と水酸化ナトリウムの中和で生じる(事がある)硫酸水素ナトリウムを考えてみましょう。NaHSO4ですね。これは中和反応で生じたので、「塩」です。

分子の中にHがあり、これは(更にNaOHと反応させれば)放出可能ですね。ですから「酸性塩」の仲間です。

実際これは、硫酸の電離度が高い(強酸)ので、

NaHSO4 → Na+ + H+ + SO42-

という電離を起こします。H+が生じていますね。ですから酸性を示します。

でも、もう一つの例を示してみましょう。

炭酸(二酸化炭素)と水酸化ナトリウムの中和で生じる、炭酸水素ナトリウムNaHCO3の場合です。

これも分子中に放出可能(「可能」なのであって、「する」とは言ってませんよ)な水素を 持っていますので「酸性塩」の仲間です。

しかし炭酸がもともと弱酸なので、水中では電離すると言うより、

NaHCO3 + H2O → Na+ + HCO3 - + H2O → Na+ + H2CO3 + OH-

と反応します。結果的に生じているのは、 OH-ですから、これは塩基性です。

「酸性塩」のくせに、液性は「塩基性」です。

う〜ん、ややこしいですが、もともと定義が違うんでねぇ。


似たような例は、中学理科にもありませんでした?

肺動脈に流れている血液は「静脈血」で、肺静脈に流れている血液が「動脈血」でした。「動脈血」と「静脈血」の定義が、「動脈」と「静脈」とは無関係でしたから、そんな事が起きるんですね。

あと、「電子の流れる向き」と、「電流の向き」が逆なのも、似ているかも知れませんね。

他の例では、1$が100円と150円では、100円の方が「円高」でしょ?

結構ありますよ、そういう例は。


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