「1気圧はなぜ760mmHgなのか」で、気圧計を水銀ではなく水で作ったら、約10mの高さになるという話をしました。
・・・
大体合ってますが、ちょっと嘘です。
ここではもう少し正確な話をしましょう。
実は、左に描いてある絵がおかしいんですよ。
「真空」と描いてある部分が、実際には完全な真空になりません。
だって、「液体の水」が面を接しているじゃないですか。
ですから、気体になった水、つまり水蒸気が平衡状態として、飽和水蒸気として充満しているはずじゃないですか。
ここから先に話は、温度次第で変化するので、以下は20℃での話とします。
さらに、図のコップの様に、側面が傾斜を持っていると、話がややこしいので、断面積1cm2の試験管で説明しましょう。
前のページで書きましたように、20℃での水の蒸気圧は、17.54mmHgです。
ですから「真空」と書いた所は、正確には17.54mmHgの圧力で、水蒸気が充満している訳です。
ならこの場合、気圧が1atm(=760mmHg)とすると、水柱の高さはどの位になるのでしょうか?
今度は試験管の上部の空間の水蒸気が、17.54mmHgの圧力で、水を押し下げる方向の力を生じています。
ですからまとめますと、
水を押し下げる力 = 水の重さ + 上部空間の水蒸気による力
水を押し上げる力 = 外気圧(がパスカルの原理を介して生じる)による力
です。
ですから、17.54mmHgというのは、比例計算をすると、
と言えます。
ですから断面積が1cm2であることを考えると、(単位はgwを使っています)
水を押し下げる力 = 水の重さ + 23.84
水を押し上げる力 = 1033
と言えますね。
で、今、釣り合っている訳ですから、「水を押し下げる力 = 水を押し上げる力」なんですよ。
ですから、
水の重さ + 23.84 = 1033
移項すると、
水の重さ = 1009
という事で、水の重さは1009gw、言い換えると質量は1009g。
水の密度が 1g/cm3 ですから、
水の質量 = 密度・(高さ・断面積)
を考慮すると、水柱の高さは1009cmと分かります。
ま、10mちょっとという意味ではほとんど同じですが、水の蒸気圧を無視した場合と、今回の考慮した場合では、20cmちょっとの差が出ます。
この違いは、数値的には数パーセントの差と小さいでしょうが、意味がだいぶ違ってくるので、入試問題では重要になってきます。
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