ではさらに応用です。 今回は非常に薄い酸の濃度を求めてみましょう。
最初の例と同じですが、塩酸のPHを求めます。HClの濃度を 1.0・10-8 mol/l とします。PHはいくらでしょうか?
PH = -log[H+]
今 [H+] = 1.0・10-8 ですから、PH=8 でしょうか? でも、それおかしいですよ。薄いとはいっても仮にも塩酸。酸性には違いないはずですが、PH8では(7を越えているので)塩基性という事になってしまいます。
実は、[H+] = 1.0・10-8 というのが間違いです。
水素イオン H+ の供給源が塩酸だけではないところがポイントです。
水のイオン積を思い出してください。水分子は自然に電離している分があります。中性ならば、[H+]=10-7のはずですから、塩酸から[H+] = 1.0・10-8よりも多いですね。つまりこれを無視していたからおかしいのです。
要するに、
[H+] = [H+]塩酸出身 + [H+]水分子出身
塩酸が電離してできたH+と、水分子が電離してできたH+を考える必要があるのです。
では、どうすれば [H+]水分子出身 が求まるのでしょうか?ここで多少のテクニックを使います。
この式を考えたら、
[H+]水分子出身 = [OH-]水分子出身
が成り立ちますね。
で、今[H+]水分子出身を知りたいので、文字Xと置きましょう。
つまり、
X = [H+]水分子出身 = [OH-]水分子出身
ですね。
今ここではOH-は水分子出身以外ありませんから、
[H+] = [H+]塩酸出身 + [H+]水分子出身 = 10-8 + X
[OH-] = [OH-]水分子出身 = X
が成り立ちます。
で、水のイオン積を考えて下さい。
[H+]・[OH-]=10-14
ここに代入しますと、
(10-8 + X)・( X ) = 10-14
これを展開しますと、
X2 + 10-8X - 10-14 = 0
と、二次方程式が出ますね。
これを解いて下さい。
X = 9.50・10-8
ですから、
[H+] = [H+]塩酸出身 + [H+]水分子出身 = 10-8 + 9.50・10-8 = 10.5・10-8 = 1.05・10-7
ですね。
だから
PH = -log(1.05・10-7)
= 6.97
ね、ちゃんと7より小さいから、酸性になっていますね。