石油の精製


さて、このページの内容自身は、化学にとっても、地理にとっても、大学受験の範囲に入りませんが、知識として持っておいた方が理解がしやすいと思うので、書いておきます。

石油は油田から汲み上げて得られます。これを原油と言います。

石油というのは混合物で、いろいろな種類の油が混じっています。ガソリンも灯油も重油もジェット燃料も、石油ガスも混じり合っています。

それら種類の違う油は、性質が違いますから、混じったままでは使えません。

例えば毎年数回、新聞にのる事故ですが、石油ストーブの灯油が切れたから、代わりにガソリンを入れて火事になったという話を聞きます。

だめだって! 灯油とガソリンは性質が違うんだから。ストーブにガソリンなんか入れたら、そりゃぁ爆発してしまうよ。(揮発性が違うため)

そこで、油田から汲み出した原油を、油の種類別に分ける必要があります。この操作を精製と言います。

石油の精製

では、具体的にはどうやって精製をするのでしょうか?

それには蒸留(分留)を利用します。

性質の違う油は沸点が違います。
名称 沸点 一分子中に含まれる
単素数
用途
気体 20℃以下 1〜C4 暖房用、調理用、化学用原料
ナフサ
直留ガソリン
20〜200℃ 5〜C12 燃料、石油エーテル、
沸点が30〜60℃の様な軽い留分は、
実験用溶媒としても使用される
ケロシン 200〜300℃ 12〜C15 燃料
重油 300〜400℃ 15〜C18 家庭用燃料、ディーゼル油
−−− 400℃以上 18以上 グリース、パラフィンろう、アスファルト

(参考文献:ハート有機化学)

そこで、この沸点の違いを利用して、種類別の石油を取り出します。

この精製には、産油国で精製できる場合もありますが、設備と技術が必要なため、多くの場合原油のまま日本まで輸送して、精製します。

ですから、ガソリン、ナフサ、灯油等、精製後に得られる石油成分の生産量では、産油国ではなく、先進国が上位にランクしています。

ナフサ

ナフサの生産(1994)

順位 国名 割合[%]
アメリカ合衆国15.6
日本10.2
オランダ7.8
ドイツ7.6
韓国6.2

原油を精製して得られる成分の内、C5〜C12(沸点で20〜200℃)の成分をナフサと言います。

ナフサは様々な化学工業の原料有機物を作る原料になります。具体的には、ここからクラッキングという方法でエチレンを作りまして、それを原料に、様々な有機化合物を合成します。(合成に関してはココ参照

エチレンの生産(1994)

順位国名割合[%]
アメリカ合衆国34.7
日本11.7
ドイツ8.0
韓国7.0
フランス5.4

クラッキング

原油に含まれるガソリン留分(成分)は、全体の25%程度ですが、燃料や、石油化学製品の原料など需要は非常に多い部分です。

ならば分留で得られる他の成分を、化学的手法でガソリン成分に変換出来れば良いですよね。

そこで、分子量が大きい成分(沸点の高い成分)を、触媒による熱分解で小さく切り、ガソリンなどの必要な成分に変換するクラッキングと言う手法を利用します。

一例を挙げますと、

1022 → C512 + C510

この際、水素の数が保存されますから、必ずアルケン が生じますね(上の例ではC5H10)。これによりエチレンを得る事もできます。


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